先日、映画「哀れなるものたち」を見て、懐かしい気持ちというか、我らの青春時代、中学生〜2010年くらいって退廃的というか、ゴスというか、エログロというか。なんか、そういうムードが流行ってたのを思い出しながら見てました。
ファッションも、マックイーン、ガリアーノのDior、昔のUNDERCOVERとか。チェコのアーティスト・ヤン・シュヴァンクマイエルもよぎるキャラクターたち。





そんな私たちの青春カルチャーが蘇ってくるようなムードが満載の映画で、私の友だち達全員絶対刺さるから見て欲しいんですけど。

詳しいあらすじは調べてもらうことにして。
GINZAに衣装デザイナーのインタビューが掲載されていて、時代設定は1890年代ながらも、衣装は1970年代のファブリックをメインに使っているとのこと。
https://ginzamag.com/categories/interview/438297
改めて場面写真を見返すと、確かに19世紀後半にはなさそうな素材と色が使用されていて、そういった色彩や素材感のディテールで主人公ベラの自立心を表していて感心してしまう。
さらにインタビューで話されていた、主人公ベラのウェディングシーン。
ヴェールを顔に巻き付けるアイデアは、エマ・ストーンからだそうで、
“彼女は目を覆うようにして、顔に巻きつけたんです。まるでアクセル・ローズ(*アメリカのロックミュージシャン)が頭にバンダナを巻くみたいに(笑)。”


これを読んだ後、本当にたまたま、ラフ・シモンズがDiorのクリエイティブディレクター就任直後の初のオートクチュールランウェイを追ったドキュメンタリー映画「Diorと私」を見返していたら、なんとヴェール(正確にはマスク?)をつけているルックが!!

このラフのDior就任一発目のオートクチュールコレクションは映画も相まって個人的には伝説的なコレクションだったな、と思っています。
映画の中でラフはDiorという歴史あるビッグブランドのクリエイティブディレクターとして、どんな思いで服をデザインしているかというのを吐露している場面があり、


これ、2012年の発言です。女性の社会進出は進めども、まだ#metoo運動は始まっていなかったし、今と女性の立場はもう少し違っていたと思われる時代。
Diorのアルチザンたちが縫った繊細なオートクチュールドレスを、誰の手も借りずに着て歩く女性を想像していたラフ・シモンズのことが今更ながらもっと大好きになった。
今のDiorのデザイナー、マリア・グラツィア・キウリの方がフェミニズム文脈で語られることが多いけど、ラフ・シモンズはミニマリストでありながらフェミニストだったことが窺えるセリフに、またラフ・シモンズのロマンティックなドレスが見たいと思ってしまう。

さらに改めてヴェールについて調べたら、魔除けの意味があり、欧米では冠婚葬祭の時にもつけるもの。結婚式につける理由は、大切に育てた娘をあなたに託します。という意味で、本来は貞操を守った証。
「哀れなるものたち」では、女性の自立や成長がテーマにあって、ベラも結婚式はすれども、おそらく人生において男性にエスコートをしてもらおうなんて思っていなかったと思うし、(そもそも貞操なんて守っていない)あくまで予想の範疇だけど、エマ・ストーンにもそんな気持ちがあったから、剥ぎ取らないと取れないようにヴェールを顔に巻きつけて、自分で自分を守るという強い意志を表現したのではないか。そう思いたいし、思わせてほしい。
まさかヴェールのつけ方、そして全く性質の異なる映画で、自分のフェミニズム心がこんなにもくすぐられるとは。
私も見えないヴェールを顔に巻きつけて、ドレスの裾を翻しながら階段をヒールで駆け上がっていきたい。